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<復刻版>最近のFMチューナー 07

これを改良した方法に「FM負帰還」方式があります。しかしオーディオ帯域の信号で100MHz近い周波数に帰還をかけるので、低いオーディオ周波数でしか帰還がかけられず、その量も6dB程度が限界です。

しかし、広帯域直線検波器の場合それ自体が発生するノイズの影響を受け易く広帯域であるがゆえ、S/Nに関しては不利となります。S/Nに関してはLC同調回路で帯域制限された狭帯域の検波器が優れています。そこで開発されたのが「DLLD」(ダイレクト・リニア・ループ・デコーダー)です。

FMチューナーの場合、妨害排除のため必ずIFフィルターにより妨害信号を除去しているので、検波帯域は±300kHz程度あれば十分です。この範囲が直線検波器であればよいわけです。LC同調回路を用いたクォードラチャー検波器では、この範囲も十分に検波出来ず、またLC同調回路を持たない「DGL」等では±1MHz以上とFMチューナーの検波器としては十分過ぎる特性を持ちます。FMチューナーの必要とする帯域だけを直線検波し、それ以外の帯域を制限することによりS/Nを向上させる検波器が理想的です。この条件に合うのが「PLL検波器」です(図16)。

Fig15

この検波器はLC同調回路を持ちませんが、帯域制限が可能で通過帯域内でVCOが直線であれば直線となります。

これ迄「PLL検波器」を使った製品もありましたが、直線性の良いVCOを実現することが困難だったり、位相比較器のS/Nが良くなかったりしたため、使われなくなりました。

「DLLD」ではVCOの非直線を改良するために、歪み補正回路を設け(図17)、VCOの直線化を行い位相比較器にS/Nの良いDBM(ダブルバランスドミキサー)を用いることにより、±300kHzで直線性の良い高S/Nの検波器となります。

7. MPX部

検波された信号をL、Rの信号に分離する部分で歪み率、セパレーション、周波数特性等の音質性能が要求されるのは当然ですが、もう一つ受信機としての受信性能(妨害排除能力)が要求されていることはほとんど知られていません。

通常、38kHzの方形波を用いてL、Rを分離しています。この38kHzの方形波には奇数倍の高調波が無限に含まれています。

図18のようにA局とB局がたまたま100kHzもしくは200kHzで隣接していると、ビートを発生し、C信号になります。このC信号がさらに38kHzの三倍の114kHzでビートダウンされ、可聴帯域に混入しバーディーノイズとなります。このバーディーノイズを取り除くことは困難なので、発生させないようにMPXの入力にアンチバーディーフィルターを挿入し、53kHz以上の不要成分を除去する必要があります。このフィルターは位相特性の良いものを用いますが、わずかな位相特性の乱れでも高域のセパレーションを劣化させます。そこで考えられたのが、38kHzの基本波を除いき高調波だけを持つウォリッシュ関数のパルスを用いてバーディーノイズだけを別に復調し、バーディーノイズを含むL、R信号に逆相で加え除去する方法です(図19)。

この方式は「SLDD」(スーパーリニア・デジタル・デコーダー)と呼ばれるものです。38kHzの方形波を用いるとバーディーノイズが発生しますが、高調波を持たない38kHzの正弦波を用いてL、Rの分離を行えば、フィルターや逆相による除去を行う必要が無くなります。

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