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MPX 6

コンポジット信号に67kHzを重畳させました。中段は通常のステレオ復調の38kHzでサンプリングしLとRの成分を取り除いた結果で、9kHzの成分が発生しています。下段は90度位相をずらした76kHzのサンプリングで9kHzのビートを抽出ました。サンプリングの周波数が異なるので中段と下段は同じ波形にはなりませんが、成分は同じで、38kHzサンプリング出力に逆相でレベルを合わせて加算すればキャンセルできます。

さらにL-02Tでは階段状の出力が得られるサンプリングホールドMPXの階段部を三角形の波形で保管しより滑らかな出力とする改良が加えられました。

方形波にしてもパルス波形にしても高調波を持つ波形を用いると53kHz以上の不要の成分が可聴帯域に変換される問題があり、ステレオ復調器には歪・S/N・セパレーションといったオーディオ性能だけでなく妨害排除能力を持たせる必要があります。従来のスイッチング方式の復調器ではなく、38kHzの正弦波により半導体の特性の一部に存在する曲線領域を利用するリニアMPXへと進化が進みました。この半導体はリニア掛け算器と名付けられたICでNJM4200やMC1495等です。上段はコンポジット信号と38kHz正弦波、中段はL出力、下段はR出力で76kHz成分が見えます。

FMチューナーでは、必ずしも原理的に優れた方式が実際の受信条件で優れた性能に結びつかない難しさがあります。パルスカウント検波器も広い直線性という優れた特徴がありますが、実際にはIFフィルターで帯域が制限されておりそこまでの広帯域は不必要であったり、広帯域であるが故にS/Nに限界があったり別の側面が問題となってきて、あらかじめ電気的に帯域を制限し、雑音除去能力に優れたDLLDに進化したように、サンプリングホールドMPXからリニアMPXとオーディオ性能だけでなく妨害排除能力の高い方式へと進化しました。

私見で恐縮ですが、こういった技術の流れが全て盛り込まれているのがD-3300Tになります。蛍光表示管でドット表示のSメーターなので、アナログメーターのようなダイナミイクレンジを表現できないため回路が簡素化されており、受信機としての格や外観や物量の格はKT-9900やL-02Tより劣りますが、独創的なグランドラインと相まって、受信性能とオーディオ性能のバランスが最も優れた機種だと思います。