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パルスカウント検波からDLLD 02

低歪率高S/N PLL検波FMチューナーのもう一つの問題は歪です。妨害信号を排除するためのIFフィルターで通過帯域を制限することで歪が発生します。IFフィルターの改善によりMONO 0.01%台の低歪を実現できるようになりましたが、選択度を確保するとここがほぼ限界になります。しかしCDの原理的に0.0015%の歪の前では一桁以上劣った性能で、低歪化もテーマとなりました。これ以上の低歪を実現する方法として、FM波の変化幅を少なくしIFフィルターの歪の発生の少ない領域だけを通過させるというFM帰還方式があります。検波した音声信号で局発に変調をかけ、入力の粗密波の変化を少なくするという、所謂アンプの負帰還と同じような考え方です。ここで問題となるのは、入力されるRFやIF信号と検波された変調信号との時間のずれが大きいと、位相が回転し系が発散しアンプの負帰還と同じように発振現象を起こしてしまうことです。パルスカウント検波は約2MHzという第二IF信号を除去するためにLPFが必要で、ここで発生する遅延時間が無視できません。遅延時間の発生の少ない検波器はPLL検波器という結論を得ました。PLL検波器はIFフィルターより広い検波帯域を確保し、かつ入力信号にVCOが追従するという動作なのでノイズの発生が少ないという特徴があり、容易に100dBを超えるS/Nが実現できました。欠点は、VCOを構成するバリキャップダイオードの印加電圧対VCO周波数変化が直線でないことで、歪発生の要因になります。この周波数変化を補正し直線性を改善したのがDLLDと名付けられた検波器です。これによりL-02Tで開発したノンスペクトラムIFという帰還処理が可能となり、一気に超低歪率と高S/Nが実現されました。これ以降、パルスカウント検波はDLLDにバトンタッチをしました。この技術は、当時一緒に仕事をしていた優秀な技術者により開発されました。この世代交代は、あまり分かりやすくは紹介されませんでした。これについては技術的に何か問題があったということではなく、パルスカウント検波が市場にやっと浸透した矢先の方針変更を誤解されることを危惧した営業戦略が影を落としたのかも知れませんが、ノーコメントとします。

DLLDからDCCDLLDでVCOの非直線性を補正したことは、複雑なノンスペクトラムIFでなくても、IFフィルターで発生する歪を補正し低歪を実現するDCCへと発展しました。DCCは、IFフィルターで発生する歪はフィルター各々で一定であることに着目し、あらかじめ必要な歪を発生させ検波出力以降で逆相にして注入するという一種のフィードフォワード制御を行います。DLLDを開発したことで、高S/Nと低歪の検波器が実現し、検波器の低歪化からDCCへと発展しIF以降の低歪化もあわせて実現できました。

MPX検波器以降で、サンプリングホールドMPXからダイレクトピュアデコーダー(DPD)MPXへの転換ステレオ復調技術を参照ください。

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